整備履歴の管理方法|記録簿の保存期間・電子保存と選び方5基準

整備履歴の管理方法と記録簿の保存期間

整備履歴の管理は、①法定の記録簿を期限どおり保存する、②履歴を顧客・車両に紐づけて次の入庫につなげる、の2層で考えます。記録簿は2025年7月から電子データでの保存も認められています。

本記事では、中古車販売店の実務に合わせて、保存期間・電子保存・管理方法の選び方・立ち上げ手順を整理します。

※2026年10月時点の法令・情報に基づいています。

目次

整備履歴の管理で守るべき法令と記録簿の保存期間

整備履歴に関わる記録簿は3種類あり、作る人と保存期間が違います。点検整備記録簿は使用者が車に備え置き、自家用乗用車なら記載の日から2年保存です。特定・指定整備記録簿は工場側が記載日から2年保存します。

記録簿作成・保存する人保存場所保存期間根拠
点検整備記録簿自動車の使用者(実務では整備工場が記入することが多い)当該自動車に備え置く定期点検が1年ごとの自家用乗用車など:記載の日から2年/6か月・3か月ごとの事業用車・貨物車など:1年道路運送車両法第49条/自動車点検基準第4条第2項
特定整備記録簿自動車特定整備事業者(認証工場)事業場記載の日から2年道路運送車両法第91条
指定整備記録簿指定自動車整備事業者(指定工場)事業場記載の日から2年道路運送車両法第94条の6・指定自動車整備事業規則

条文はe-Gov法令検索「道路運送車両法」で確認できます。個別の扱いに迷う場合は、管轄の運輸支局に確認してください。

中古車販売店が押さえるポイント

  • 整備を外注している場合、特定整備記録簿の保存義務は作業した工場側にあります。自社には法定書類が残りにくいため、販売店側の履歴は自社ルールで残す必要があります。
  • 点検整備記録簿は車に備え置く書類です。販売時は車両に付けて引き渡します。
  • 在庫車の記録簿は、移動や商品化の途中で紛失しやすい書類です。仕入れ時点で有無を記録しておきます。

法定の記録とは別に、販売店が残しておきたい履歴

場面残す項目使い道
仕入れ時記録簿の有無、最終点検日と走行距離、主な交換部品商品化の要否判断、販売時の説明
商品化・納車整備作業内容、交換部品、外注先、費用原価の把握、保証対応
販売時引き渡した記録簿の写し、納車時の走行距離販売後の問い合わせ・保証対応
販売後点検・車検・修理の日付、走行距離、次回予定日車検・点検の案内、問い合わせ対応
保証・クレーム症状、対応内容、対応日再発時の判断、対応品質の統一

整備記録簿の電子保存|2025年7月の取扱いと販売店の注意点

2025年7月8日から、点検整備記録簿・特定整備記録簿・指定整備記録簿は電子データでの作成・保存が認められています。ただし運輸支局等で検査を受けるときの提示は書面が必要で、工場側には改ざん防止などの措置が求められます。

国土交通省は2025年7月8日の報道発表「時代に合わせた整備事業規制のアップデート」で、「電子」点検整備記録簿の解禁を公表しました。具体的な要件は、同省の「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」にまとめられています。

使用者(車に備え置く記録簿)の扱い

  • スマートフォン・SDカード・クラウドなどに保存し、携行する方法が認められている
  • 紙の記録簿をスキャンしたデータでもよい
  • 求められたときに、直ちに画面へ明瞭に表示できることが条件。電池切れや操作に不慣れで表示できない場合は、点検整備未実施として扱われる
  • 運輸支局・自動車検査登録事務所・軽自動車検査協会で検査を受ける際は、書面の記録簿を提示する

整備工場(認証・指定)が電子で保存する場合の措置

求められる措置現場での確認方法
記録簿のデータを検索できる車台番号・登録番号・日付で引けるか
別の記録媒体へ移せるデータを書き出せるか
作成・更新・消去の日時、更新箇所、作業者を自動で記録変更履歴が残る仕組みか
保管場所を定め、改ざんを防ぐ保存先へのアクセスを制限しているか
バックアップでデータ消失に備える定期バックアップの有無
ID・パスワードで権限を管理し、IDを共用しない担当者ごとにアカウントがあるか

PDFを共有フォルダに置くだけでは、変更履歴の自動記録や権限管理の要件を満たしにくくなります。自社に認証工場がある店は、使っている整備システムがこの取扱いに対応しているかを確認してください。

販売店の実務で変わること

  • 引き渡し前に取る記録簿の写しは自社の記録です。スキャンして車台番号に紐づける運用は、これまでどおり有効です
  • 仕入れた車の記録簿が「電子で保存されていた」ケースが今後増えます。仕入れ時に、紙かデータかと保存先を確認します
  • 工場が特定整備記録簿の写しを電子で渡す場合は、使用者の事前承諾が必要です。外注先から写しをデータで受け取るときは、受け取り方法を先に決めておきます
  • 車検を代行する場合、運輸支局等への提示は書面です。電子で持つ顧客には印刷の要否を事前に伝えます

中古車販売店で整備履歴が効く3つの場面

整備履歴が利益と信用に直結するのは、仕入れ・商品化、販売時の説明、販売後の車検・点検の3場面です。どの場面でも「車両単位ですぐ引ける」状態が前提になります。

仕入れ・商品化:記録簿は車両状態を推測する材料

記録簿の点検日と走行距離から、前オーナーの整備の頻度がわかります。部品交換の記録は、修復歴を推測する材料にもなります。見方は事故歴・修復歴の確認方法で解説しています。

商品化で行った作業も、その車両の履歴として残します。外注先・作業内容・費用が車両ごとに追えると、原価と商品化の日数を把握できます。商品化の進め方は整備・商品化の効率化の記事で扱っています。

販売時:記録簿がない車の説明と、写しの保存

記録簿がないことは、整備不良と同じ意味ではありません。紛失や、工場が記録簿を発行していないケースもあります。現車確認の結果と商品化の作業内容を記録し、購入者に説明できる状態にしておきます。

記録簿の原本は車と一緒に購入者へ渡ります。引き渡し前に写し(コピーやスキャン)を取り、車台番号に紐づけて保存しておくと、販売後の問い合わせに原本なしで答えられます。

販売後:次の車検・点検の案内につなげる

前回の作業日と走行距離があれば、次のオイル交換や点検の時期を案内できます。問い合わせの電話でも、履歴がすぐ出れば顧客を待たせません。販売後の入庫は、整備売上と次の乗り換え相談の入口になります。

車検(継続検査)は、2025年4月の国土交通省の省令改正で、有効期間満了日の2か月前から受けられるようになりました。満了日を基準に、2か月前に案内が届くよう次回予定日を設定しておくと、予約を前倒しで取りやすくなります。

紙・Excel・システムの違いと、Excelで足りる条件

入力・閲覧する担当者が1人で、販売後の入庫が少ない店ならExcelでも回ります。複数人が同時に使う、車検・点検の案内まで漏れなく回したい場合は、専用システムの方が漏れを防げます。

項目紙の台帳Excel整備履歴管理システム
検索台帳をめくって探す検索・フィルタで探せる顧客名・車台番号・登録番号で引ける
複数人での利用同時に使えない共有方法しだいで上書き事故が起きやすい複数人の同時利用が前提
期限の通知なし手作業(条件付き書式などで補う)製品により自動で通知
入力ミス対策なし入力規則で一部防げる選択式入力やマスタで防ぎやすい
変更履歴残らない残りにくい製品により自動で残る
費用ほぼかからないソフト代のみ利用料が継続して発生
向く店販売後の入庫がほぼない担当1人・入庫が少ない担当が複数・入庫が多い

紙・Excel管理でよく起きる3つの問題

  • 探すのに時間がかかる:台帳や複数のシートを探す間、問い合わせの顧客を待たせます。
  • 共有が遅れ、二重入力が起きる:入力した情報が他の担当に伝わらず、重複や入力ミスが起きます。
  • 属人化する:履歴や顧客の事情が担当者の頭の中にしかなく、不在時に対応が止まります。

Excelで管理するなら最低限そろえる列

1行に1作業を記録し、車台番号を検索のキーにします。列は次の10項目をそろえてください。

  1. 車台番号
  2. 登録番号(ナンバー)
  3. 顧客名または顧客番号
  4. 作業日
  5. 走行距離
  6. 作業区分(車検/法定点検/一般整備/商品化/保証)
  7. 作業内容と交換部品
  8. 作業した工場(自社/外注先)
  9. 次回予定日
  10. 記録簿原本・写しの保管場所(紙/データの別と保存先)

作業区分は選択式(入力規則のリスト)にすると、表記ゆれを防げます。在庫車の管理表の作り方は在庫車両管理表の作り方も参考にしてください。

顧客名や連絡先を含むファイルは、個人情報保護法の対象です。閲覧できる人を決め、ファイルにパスワードを設定し、私物のPCやUSBメモリに持ち出さないルールを決めておきます。

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整備履歴管理システムの主な機能

整備履歴管理システムは、顧客・車両・整備履歴を1つのデータで管理する仕組みです。中心は履歴の検索、記録簿や伝票の作成、次回期限の通知で、搭載範囲は製品ごとに異なります。

機能できること確認ポイント
顧客・車両の一元管理顧客に保有車両と整備履歴を紐づける車台番号・登録番号で引けるか
車検証の読み取り車検証の情報を読み取って車両データを作る電子車検証のICタグ・二次元コードに対応しているか
点検整備記録簿の作成・保存記録簿を画面上で作成し、データで残す自社の整備体制(認証・指定)に合う様式か。電子保存の措置(変更履歴・権限管理・バックアップ)があるか
期限の通知車検・点検・オイル交換の時期を知らせる通知方法(一覧表示・メール・はがき・SMS等)。満了2か月前を起点に設定できるか
見積・伝票の作成整備内容から見積書・請求書を作る法定費用の自動計算があるか
部品在庫の管理部品の在庫と発注を管理する自社の整備部門の規模に見合うか
OBD検査の記録スキャンツールの結果を履歴として残す自社で対象車を扱うか、結果を記録項目として持てるか

国土交通省は2023年1月から自動車検査証(車検証)を電子化しています。車検証の券面に記載されない情報はICタグに記録されるため、読み取りに対応したシステムかどうかで入力の手間が変わります。

車検では、2024年10月から(輸入車は2025年10月から)車載式故障診断装置を使うOBD検査が始まっています。対象は2021年10月以降の新型車(輸入車は2022年10月以降)です。自社工場でこうした車を扱う店は、検査結果を履歴に残せるかも確認します。

検索結果には、社用車や運送会社向けの「車両管理システム」も多く並びます。こちらは運行・運転者の管理が中心で、販売店の顧客対応とは目的が違います。比較の際は「販売店・整備工場向け」かを確認してください。

整備履歴管理システムの選び方5つの基準

選ぶ基準は、①自社の整備体制に合うか、②既存データを移せるか、③販売・顧客管理とつながるか、④現場が入力を続けられるか、⑤総額で見合うか、の5つです。

① 自社の整備体制に合うか

自社の体制優先する機能
自社に認証工場・指定工場がある記録簿の作成と電子保存の措置、車検書類の作成、作業伝票
整備は外注が中心外注先の作業明細や記録簿の写しを取り込み、顧客・車両に紐づける機能
販売が中心で整備はほぼ外注顧客管理と車検・点検時期の一覧

② 既存データを移せるか

Excelの履歴をCSVで取り込めるかを確認します。取り込めないと、過去分は手入力か紙のまま残ります。取り込み時に列の対応表が必要かも事前に聞いておきます。

③ 販売・顧客管理とつながるか

整備だけ別ツールにすると、顧客情報を二重に入力することになります。販売管理・顧客管理と同じデータで履歴を持てるかを確認します。使っている会計ソフトとの連携可否も確認対象です。販売管理システム全体の比較は中古車販売管理システムの比較記事で解説しています。

④ 現場が入力を続けられるか

  • 作業後すぐ入力できるか(タブレット・スマホ対応の有無)
  • 車検証の読み取りで、車両情報の手入力を減らせるか
  • クラウド型か、自社サーバーで運用するオンプレミス型か。クラウド型は場所を選ばず使え、オンプレミス型は社内でデータを管理したい場合に向きます
  • 担当者ごとにIDを分けられるか(電子保存の措置としても必要)
  • 導入後に操作を聞ける窓口があるか
  • 無料トライアルやデモで、実際の担当者が操作を試せるか

⑤ 総額で見合うか

月額だけでなく、初期費用、追加機能の費用、移行作業にかかる自社の工数を合算して比べます。店舗や担当者が増えたときに費用がどう変わるかも確認します。

システム化のデメリットと向かないケース

システムは、入力が続かなければ紙より役に立ちません。固定費と移行の手間もかかります。担当1人で販売後の入庫が少ない店は、まずExcelで項目を統一する方が合理的です。

  • 利用料が毎月かかる
  • 既存データの移行と入力ルールづくりに時間がかかる
  • 入力担当が決まっていないと、データが歯抜けになる
  • 記録簿を電子で保存しても、運輸支局等で検査を受けるときは書面の提示が必要。印刷の手順は残る
  • 電子保存の措置(変更履歴・権限管理・バックアップ)に対応していない製品では、法定の記録簿を電子だけで持つことに向かない

次に当てはまる店は、システム化を急ぐ必要はありません。

  • 整備をすべて外注し、販売後の入庫がほとんどない
  • 入力・閲覧する担当者が1人で、Excelで検索に困っていない
  • 車検・点検の案内を行う予定がない

整備履歴管理を立ち上げる5ステップ

進め方は、現状の棚卸し、残す項目の統一、既存データの移行、入力ルールの決定、月1回の見直しの順です。先に残す項目を決めると、システム選びで迷いません。

  1. 棚卸し:紙・Excel・外注先からの書類・電子データなど、履歴が今どこにあるかを書き出す
  2. 項目の統一:前述の10列を基準に、自社で残す項目と表記ルールを決める
  3. 移行:直近の顧客・在庫車から優先して移す。古い記録は保管場所だけ記録する
  4. 入力ルール:誰が、いつ(作業完了時・納車時など)入力するかを決める
  5. 見直し:月1回、次回予定日の空欄や入力漏れを確認する

よくある質問

整備履歴の管理でよく出る質問は、記録簿の保存期間と電子保存、記録簿がない車の扱い、Excelで足りるか、外注時の残し方、社用車向けシステムとの違いの5点です。以下で順に答えます。

Q. 点検整備記録簿は何年保存すればよいですか?電子データでもよいですか?

A. 定期点検が1年ごとの自家用乗用車などは記載の日から2年、それ以外は1年です(自動車点検基準第4条第2項)。特定整備記録簿・指定整備記録簿は、記載の日から2年です。2025年7月からは電子データでの保存も認められていますが、運輸支局等で検査を受けるときは書面を提示します。

Q. 記録簿がない中古車は販売できませんか?

A. 販売はできます。記録簿は紛失などでも欠けます。現車確認の結果と商品化の作業内容を記録し、購入者に説明できる状態にしておくことが大切です。

Q. Excelでも整備履歴は管理できますか?

A. できます。担当者が1人で入庫が少ない店なら十分です。車台番号をキーに1行1作業で記録し、次回予定日の列を必ず設けてください。

Q. 整備を外注している場合、履歴はどう残しますか?

A. 外注先から作業明細と記録簿の写しを受け取り、自社の顧客・車両データに紐づけて保存します。特定整備記録簿の保存義務は、作業した工場側にあります。写しをデータで受け取る場合は、受け取り方法を外注先と決めておきます。

Q. 社用車向けの「車両管理システム」とは何が違いますか?

A. 社用車向けは運行と運転者の管理が中心です。販売店向けの整備履歴管理は、顧客への案内と販売・整備の管理が中心です。

まとめ:整備履歴の管理は「法定」と「販売」の2層で考える

整備履歴の管理は、法定の記録簿を期限どおり残すことと、履歴を顧客・車両に紐づけて次の入庫につなげることの2層です。小規模ならExcelで項目を統一し、担当や入庫が増えた段階でシステム化を検討します。

  • 記録簿は3種類。点検整備記録簿は車に備え置き、自家用乗用車なら記載の日から2年保存
  • 2025年7月から電子保存が可能。ただし検査時の提示は書面、工場側は改ざん防止などの措置が必要
  • 販売店の履歴は、仕入れ・商品化・販売時・販売後・保証の5場面で残す
  • 車検の案内は、受検できる満了2か月前を起点に組む
  • システムは、整備体制・移行・連携・入力継続・総額の5基準で選ぶ

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