売れ筋中古車は、全国の人気ランキングでは決まりません。自社の販売実績を「粗利額×在庫日数」で並べ、仕入れ前に落札相場と照らして判断します。この記事では、その手順を4ステップで解説します。
※2026年10月時点の情報です。
売れ筋中古車は「台数」ではなく「粗利×回転」で決める
自社にとっての売れ筋は、販売台数の多さではなく、1台あたりの粗利額と在庫日数の組み合わせで決まります。台数だけを見ると、薄利で回っている車種を「売れ筋」と誤認します。
| 見る指標 | わかること | 見落とすこと |
|---|---|---|
| 販売台数だけ | よく動いている車種 | 利益が残っているか、資金が寝ていないか |
| 粗利額×在庫日数 | 利益と資金効率の両方 | 台数が少ない車種の偶然のブレ(後述) |
勘と経験だけに頼る仕入れの3つのリスク
- 属人化:仕入担当者の退職や異動で、仕入れ精度が大きく変わる
- 市場とのズレ:過去の成功体験が、新しい売れ筋を見逃す原因になる
- 不良在庫:「売れるはず」という思い込みが、資金を長期間寝かせる
データで判断すると変わる3つのこと
- 仕入れの優先順位:粗利額が大きく、在庫日数が短い車種を客観的に特定できる
- 在庫の資金効率:長く残る車種が早めにわかり、値付けや仕入れ停止の判断が早くなる
- 提案の精度:自社の顧客層が買う車種がわかり、商談で勧める車を絞れる
参考までに、当社のモニター店舗の平均在庫回転は1.5ヵ月です。店舗の規模や扱う車種で適正値は変わるため、まずは自社の現状値を出すことから始めてください。
全国の中古車市場は横ばい(2025年の統計)
自販連の統計では、2025年の中古車登録台数(登録車)は3,632,179台、前年比99.2%でほぼ横ばいでした。市場全体が伸びない局面では、全国の人気車種を追うより自社の勝ち筋を探すほうが現実的です。
| 車種区分(登録ナンバー別) | 2025年 登録台数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 普通乗用車 | 1,978,593台 | 100.1% |
| 小型乗用車 | 1,180,970台 | 96.6% |
| 合計(貨物・バス等を含む) | 3,632,179台 | 99.2% |
仕入れ環境も楽ではありません。日本中古自動車販売協会連合会は2025年7月、オークションの成約単価が高く、輸出向けにも流れるため仕入れが厳しい状況が続いているとの見方を示しました(日刊工業新聞 2025年7月11日)。高く仕入れた車を値下げで売れば、台数が出ても利益は残りません。
年式・走行距離以外に見るべき3つの観点
自社データで仮説を立てるときは、年式と走行距離だけでなく、次の観点でも販売実績を分けて見てください。
- 装備:安全運転支援システム、サンルーフ、純正ナビなど後付けできないメーカーオプション
- グレード・カラー:スポーツグレード、特別仕様車、人気色かどうか
- 用途:4WD、車中泊向けの仕様など、特定の用途に合う車両か
自社の売れ筋を分析する4ステップ
自社の売れ筋分析は「目的を決める→データを集める→粗利×在庫日数で分類する→仕入れを変えて検証する」の4ステップで進めます。Excelでも始められますが、集計項目をそろえることが前提です。
ステップ1:分析の目的を1つに絞る
目的が曖昧だと、集めたデータを判断に使えません。最初は1つに絞ります。
- 粗利額の大きい車種の仕入れを増やしたい
- 在庫期間が3ヶ月を超える車両を減らしたい
- 新規客向けの集客の柱になる車種を見つけたい
ステップ2:必要なデータを集める
データは、社内の「内部データ」と社外の「外部データ」に分かれます。判断の軸になるのは内部データです。
| 種類 | データ例 | 取得方法 |
|---|---|---|
| 内部データ | 販売実績、在庫データ、顧客情報(年齢・地域)、Webサイトのアクセス数 | 販売管理システム、顧客管理システム、Excel台帳 |
| 外部データ | オークション相場、業界統計、競合の掲載価格、地域の人口動態 | 相場ツール、業界団体の統計、ポータルサイト |
1台ごとに、最低限次の項目を記録してください。どれか1つでも欠けると、粗利と在庫日数が計算できません。
| 項目 | 使い道 |
|---|---|
| 車種・グレード・年式・走行距離・色 | 車種別・条件別に集計する |
| 仕入日・仕入額・仕入先 | 在庫日数と原価を出す |
| 整備費・陸送費などの諸経費 | 本当の原価を出す |
| 販売日・販売額 | 粗利額と在庫日数を出す |
| 問い合わせ数・来店数 | 売れ残りの原因が価格か露出かを切り分ける |
ステップ3:粗利額×在庫日数で4つに分類し、仮説を立てる
車種ごとに平均粗利額と平均在庫日数を出し、自社の中央値を境に4つに分けます。基準は全国平均ではなく、自社の中央値です。
| 在庫日数が短い | 在庫日数が長い | |
|---|---|---|
| 粗利額が大きい | 主力車種:仕入れを増やす候補 | 値付けと掲載内容を見直す |
| 粗利額が小さい | 回転用:台数で資金を回す | 仕入れを止める候補 |
分類したら、「なぜそうなっているか」の仮説を立てます。
- 軽ハイトワゴンの成約率が高い → 近隣にファミリー向けの住宅が増えたからでは?
- 特定のSUVだけWebからの問い合わせが多い → 近隣の店が同じ車種を扱っていないからでは?
ステップ4:仕入れを変えて、期間を決めて検証する
仮説を、仕入れと販促の具体的な行動に落とします。あわせて、検証する期間と見る数字を先に決めます。
- 仮説(例):近隣にファミリー層が増えている
- 行動(例):軽ハイトワゴンとコンパクトミニバンの仕入れを10%増やし、地域向けのチラシで訴求する
- 検証:3ヶ月後に、対象車種の粗利額と在庫日数が分類表のどこに動いたかを確認する
この「実行と検証」を続けることが、データ分析を経営に役立てる条件です。
仕入れの判断を、勘ではなく相場データで。
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仕入れ前に相場で「落札してよい金額」を決める
売れ筋がわかっても、高く仕入れれば利益は残りません。入札前に落札相場を確認し、販売想定額から逆算した上限額を決めてから入札します。
- 相場を確認する:同じ車種・年式・走行距離帯の落札実績を見る
- 入札レンジを決める:極端に高い・安い落札を除き、適正な価格帯を出す
- 粗利を試算する:販売想定額から、諸経費と目標粗利を引く
- 上限額を決めて入札する:上限を超えたら見送る
当社のCarChooseは、直近1年間・150万件の落札データを保持しています。IQR法で外れ値を除外し、相場に対して割安/適正/割高を判定します。極端な落札価格に引きずられずに、上限額を決めるためです。
オークションデータの活用方法は「中古車オークションのデータ活用で利益を最大化する方法」で、仕入れ値と販売価格の決め方は「利益を最大化する仕入れ値と販売価格のバランス」で詳しく解説しています。
データ分析が向かないケースと限界
販売台数が少ない車種や1台物は、データだけでは判断できません。データは過去の実績なので、相場の急変や新しい需要には遅れて反応します。
- 台数が少ない:月に数台しか売れない車種は、1台の値下げで平均が大きく動く。半年〜1年分をまとめて見る
- 希少車・1台物:比較できる落札実績が少なく、相場の幅が広い。目利きの判断が欠かせない
- 記録の手間:諸経費や問い合わせ数の記録が漏れると、粗利が実態より高く出る
- 過去データである:モデルチェンジや輸出需要の変化は、実績に表れるまで時間がかかる
データは勘と経験を置き換えるものではありません。経験で立てた仮説を、数字で確かめるために使います。
分析を続けるには、データを1か所に集める
分析が続かない最大の原因は、集計の手間です。顧客・在庫・販売のデータが別々の場所にあると、分析のたびに集め直すことになります。
- データの一元管理:顧客、在庫、伝票を同じ場所で管理すると、集計の準備がいらなくなる
- 顧客×販売データの掛け合わせ:「どの地域の、どの年代の顧客が、どの車種を、いくらで買ったか」を出せる
- 属人化の解消:担当者が変わっても、同じ数字を見て仕入れと値付けを判断できる
従業員数名の店なら、最初はExcelやGoogleスプレッドシートで十分です。車両が増えて手入力が負担になったら、販売管理システムへの移行を検討してください。在庫データの見方は「中古車販売の在庫分析ガイド」を、粗利率の目安は「中古車販売の利益率」を参照してください。
よくある質問
Q. 全国の売れ筋車種はどこで調べられますか?
A. 登録車の中古車登録台数は日本自動車販売協会連合会が、軽自動車は全国軽自動車協会連合会が公表しています。車種ごとの相場は、オークションの落札データで確認します。
Q. 販売台数が少ない店でも、データ分析に意味はありますか?
A. あります。ただし月単位では数字がブレるため、半年〜1年分をまとめて見てください。台数が少ない店ほど、1台の仕入れ判断の重みが大きくなります。
Q. Excelだけで分析できますか?
A. できます。車種、仕入日、仕入額、諸経費、販売日、販売額を1台ごとに記録すれば、粗利額と在庫日数は計算できます。記録の手間が負担になったら、システム化を検討してください。
Q. 在庫日数はどれくらいを目安にすればいいですか?
A. 扱う車種や価格帯で適正値は変わります。参考までに、当社のモニター店舗の平均在庫回転は1.5ヵ月です。まず自社の現状値を出し、車種ごとに比べてください。
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