中古車販売の利益率は、粗利率(売上高総利益率)で25〜29%が目安です。日本政策金融公庫が2026年8月に公表した、中古自動車小売業の規模別平均値です。一方で営業利益率は平均−1.5〜1.4%にとどまり、粗利の大半は経費に消えています。
この記事では、データの読み方、月に何台売れば黒字になるかの計算、1台ごとの粗利を守る仕入れの決め方を整理します。
※本記事は2026年10月時点の情報です。
中古車販売の利益率の目安は粗利率25〜29%
中古車小売業の粗利率は、日本政策金融公庫の2026年公表データで従業者規模別の平均24.8〜28.7%です。10人以上の店舗はやや高めです。
従業者規模別の利益率データ(2026年公表)
日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2025年度調査、2026年8月掲載)から、中古自動車小売業の数値を抜き出しました。
| 従業者規模 | 調査対象数 | 粗利率 | 営業利益率 | 商品回転期間 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜4人 | 175 | 25.2% | −1.5% | 1.5ヵ月 |
| 5〜9人 | 92 | 24.8% | −0.1% | 1.7ヵ月 |
| 10〜19人 | 26 | 27.6% | −1.3% | 1.3ヵ月 |
| 21〜49人 | 12 | 28.7% | 1.4% | 1.8ヵ月 |
この数値を自店と比べる際は、次の3点に注意してください。
- 平均値であり、店舗ごとのばらつきは大きい(粗利率の標準偏差は11.8〜16.0ポイント)
- 調査対象は公庫と取引のある小企業。10人以上の区分は対象数が26社・12社と少ない
- 決算書の売上高をもとにした数値のため、整備や手数料などの売上も含む
「利益率10〜20%」という情報との違い
ネット上では「中古車の利益率は10〜20%」という説明が多く見られます。その多くは出典が示されていません。
公庫データとの差は、計算の範囲の違いで説明できる可能性があります。車両1台の売買差益だけを見るか、整備や手数料を含む決算全体を見るかで数値は変わります。仕入れ原価を基準に「何%上乗せするか」で語っている情報も混ざっています。自店の数字と比べるときは、範囲と基準を揃えてください。
粗利率の計算方法と原価に含めるもの
粗利率は次の式で計算します。
粗利率(%)=(販売価格−仕入れ原価)÷販売価格×100
例えば、仕入れ原価120万円の中古車を150万円で販売した場合、粗利は30万円、粗利率は20%です。
仕入れ原価には、落札価格だけでなく次の費用も含めます。含めずに計算すると、粗利率は実態より高く見えます。
- オークションの落札手数料
- 会場から店舗までの陸送費
- 商品化にかかった整備・板金・クリーニングの費用
もう1つの注意点は、基準となる価格です。同じ粗利30万円でも、仕入れ原価120万円を基準にすると25%になります。社内でどちらの基準を使うか統一しておきましょう。
この粗利から人件費・広告費・店舗維持費などの経費を差し引いたものが、営業利益です。
粗利が出ても営業利益が残りにくい理由
粗利率が25%前後あっても、人件費と諸経費で売上の約23〜28%を使うため、公庫データの営業利益率は平均−1.5〜1.4%にとどまります。
| 従業者規模 | 人件費の売上比 | 諸経費の売上比 | 合計 | 損益分岐点比率 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜4人 | 9.9% | 14.6% | 24.5% | 107.9% |
| 5〜9人 | 10.8% | 11.9% | 22.7% | 105.3% |
| 10〜19人 | 14.3% | 11.4% | 25.7% | 104.2% |
| 21〜49人 | 15.4% | 12.7% | 28.1% | 96.5% |
損益分岐点比率は、実際の売上高に対する損益分岐点売上高の割合です。100%を超えると、売上が損益分岐点に届いていない状態を示します。平均値で100%を下回るのは21〜49人の区分だけです。
つまり、粗利率が経費率を上回らなければ営業利益は残りません。小規模店では役員報酬の設定でも営業利益は大きく動きます。営業利益率だけで判断せず、粗利額と経費額を月次で並べて確認してください。
1人あたり売上高で自店の生産性を比べる
同じ公庫データには、従業者1人あたりの売上高と人件費も載っています。利益率と並べると、自店の人員配置が平均と比べて重いか軽いかを判断できます。
| 従業者規模 | 1人あたり売上高(年) | 1人あたり人件費(年) |
|---|---|---|
| 1〜4人 | 約6,131万円 | 約371万円 |
| 5〜9人 | 約5,434万円 | 約393万円 |
| 10〜19人 | 約4,068万円 | 約442万円 |
| 21〜49人 | 約4,026万円 | 約436万円 |
規模が大きいほど1人あたり売上高は下がり、人件費は上がります。整備や事務など販売以外の人員が増えるためと考えられます。人を増やす前に、増員で1人あたり売上高がどこまで下がるかを試算してください。
大手と中小で異なる利益の出し方
利益の出し方には、大きく2つの型があります。一般に大手は台数型、中小は単価型の戦略をとりやすいとされます。
| 型 | 考え方 | 前提になる力 |
|---|---|---|
| 台数型(薄利多売) | 1台の利益を抑え、販売台数で全体の利益を確保する | 大量仕入れ、効率的な在庫管理、集客力 |
| 単価型(専門特化) | 特定の車種や顧客層に絞り、付加価値で1台の利益を高める | 専門知識、提案力、販売後のサービス |
どちらが正しいかではなく、自店の集客力と資金量で選ぶものです。
月に何台売れば黒字になるか(損益分岐台数の出し方)
黒字に必要な月の販売台数は「月の固定費÷1台あたりの平均粗利額」で出せます。粗利率ではなく粗利額で割るのがポイントです。
計算は次の3ステップです。
- 月の固定費を合計する(人件費・役員報酬、家賃、掲載費・広告費、リース料など)
- 直近3〜6ヵ月の1台あたり平均粗利額を出す(原価には手数料・陸送費・整備費を含める)
- 固定費÷平均粗利額で、損益分岐台数を出す
| 項目 | 計算例 |
|---|---|
| 月の固定費 | 300万円 |
| 1台あたり平均粗利額 | 30万円 |
| 損益分岐台数 | 月10台 |
| 平均粗利額が25万円に下がった場合 | 月12台 |
この例では、1台あたりの粗利が5万円減るだけで、必要台数が2台増えます。値引きで1台を早く売ることが、月全体では黒字台数を押し上げる場合があるということです。
整備・車検や保険手数料の粗利が毎月安定して入る店は、その分を固定費から差し引いて計算すると実態に近づきます。
中古車販売店の5つの収益源
中古車販売店の利益は車両の売買差益だけでなく、ローン・保険の手数料、整備・車検、下取り・買取、用品販売を組み合わせた5つの収益源から生まれます。
1. 車両本体の販売利益
最も基本的な収益源です。相場を把握し、車両の価値を正確に見極めて仕入れることが前提になります。
2. 自動車ローン・保険の手数料
提携する信販会社や保険会社から、紹介手数料を得る形です。手数料の条件は、各社との契約内容によって異なります。保険は継続契約が続けば、車両販売以外の安定収益になります。
3. アフターサービス・整備
車検、点検、オイル交換、修理、コーティングなどです。購入客に繰り返し来店してもらうことで、LTV(顧客生涯価値)を高められます。
4. 下取り・買取による差益
顧客から直接買い取った車は、オークション経由より中間コストがかかりません。その分、粗利を確保しやすくなる可能性があります。
5. 関連商品・用品の販売
ETC、ナビ、ドライブレコーダーなどの取り付けです。顧客のニーズに合う提案ができれば、1件あたりの単価アップが期待できます。
前章の公庫データの粗利率は、こうした収益を含む決算全体の数値です。
利益率が変動する4つの要因
利益率は、車種・グレード、仕入れルート、車両の状態、在庫期間の4つで大きく変わり、特に在庫期間の長期化は値下げを通じて粗利を削ります。
- 車種・グレード:人気車や希少車は高く売れる一方、仕入れ価格も高くなりやすい
- 仕入れルート:オークション、自社買取、委託販売で、コストとリスクが異なる
- 車両の状態:修復歴、内外装の傷、走行距離が販売価格と商品化費用を左右する
- 在庫期間:売れ残るほど値下げが必要になり、保管や資金のコストも積み上がる
価格帯が低いほど諸費用の重みが増す
落札手数料や陸送費は、車両価格に関係なくほぼ一定額かかります。そのため低価格帯の車ほど、販売価格に占める諸費用の割合が大きくなります。
| 販売予定価格 | 諸費用 | 販売価格に占める諸費用 |
|---|---|---|
| 50万円 | 10万円 | 20% |
| 100万円 | 10万円 | 10% |
| 200万円 | 10万円 | 5% |
低価格帯を主に扱う店は、粗利率の目標を高めに置くか、整備や用品で1件あたりの粗利を補う設計が必要です。
在庫日数が粗利を削る仕組み
売れ残った車は、値下げと保有コストで毎月少しずつ粗利を失います。保有コストには、掲載費、展示場所の費用、仕入れ資金の金利が含まれます。
| 販売までの期間 | 値下げ・保有コストの累計 | 残る粗利 |
|---|---|---|
| 1ヵ月 | 3万円 | 27万円 |
| 2ヵ月 | 6万円 | 24万円 |
| 3ヵ月 | 9万円 | 21万円 |
自店の数字で、1台あたり月いくらの粗利が減っているかを一度計算してください。在庫日数の上限を決める根拠になります。
仕入れルート別の利益率の考え方
オークションは選択肢が広い反面で手数料と陸送費がかかり、自社買取は中間コストが少ない反面で集客力が要り、委託販売は在庫リスクが小さい反面で1台の利益が限られます。
| ルート | メリット | デメリット | 向いている店 |
|---|---|---|---|
| オークション | 全国の車両から選べ、希望車種を探しやすい | 実車を直接確認できず、状態を見極めるスキルが要る。手数料・陸送費がかかる | 相場を読む力があり、仕入れ台数を確保したい店 |
| 自社買取 | オークション手数料などがかからず、粗利を確保しやすい | 買取価格の設定が難しい。集客力がないと台数を確保できない | 地域での集客基盤がある店 |
| 委託販売 | 在庫を抱えないため、在庫リスクを抑えられる | 収益は手数料に限られ、価格決定の主導権も弱い | 資金を在庫に寝かせたくない開業直後の店 |
仕入れ戦略の詳しい記事は「仕入れ・オークション戦略」にまとめています。
1台ごとの粗利を守る「落札上限額」の決め方
1台ごとの粗利を守るには、販売予定価格から目標粗利と諸費用を差し引いた「落札してよい上限額」を入札前に決め、超えたら見送ることが基本です。
- 同じ車種・年式・走行距離の相場から、販売予定価格を決める
- 自店の経費率をもとに、目標粗利を決める
- 落札手数料、陸送費、整備・板金などの諸費用を見積もる
- 上限額=販売予定価格−目標粗利−諸費用 で計算する
- 入札が上限額を超えたら、その車両は見送る
| 項目 | 計算例 |
|---|---|
| 販売予定価格 | 150万円 |
| 目標粗利(粗利率25%) | 37.5万円 |
| 諸費用(手数料・陸送・整備) | 10万円 |
| 落札上限額 | 102.5万円 |
目標粗利率は、自店の経費率より高く設定する必要があります。公庫データの平均では、人件費と諸経費だけで売上の約23〜28%を使っています。自店の経費率に、確保したい利益を足した値を下限にしてください。
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利益率を高める4つの改善策
利益率を高める改善策は、在庫回転を上げる、経費を販売1台あたりで管理する、販売後の関係から収益を得る、自社の情報発信で集客コストを抑える、の4つです。
在庫回転率を上げる
在庫は資産であると同時にコストです。滞留するほど相場下落で価値が下がり、保管や資金のコストも増えます。
公庫データの商品回転期間は、平均1.3〜1.8ヵ月です。当社モニター店舗の平均在庫回転は1.5ヵ月です。算出方法が異なるため単純比較はできませんが、自店の水準を測る目安になります。
在庫日数の上限と、超えた車両の値下げルールを事前に決めておきましょう。在庫管理の具体策は「在庫管理」の記事で解説しています。
経費を販売1台あたりで管理する
車両価格はネットで比較されやすく、価格で差をつける余地は限られます。そのため、車両以外の費用をどれだけ抑えるかが営業利益を左右します。
広告費・掲載費・人件費を月の販売台数で割り、1台あたりの経費として確認してください。粗利が経費を上回っているかが、1台ごとに判断できるようになります。
販売後の関係から収益を得る
「この店で買ってよかった」と感じてもらうことが、リピートと紹介につながります。車検・整備・保険の継続は、車両販売の粗利に頼らない収益になります。
自社の情報発信で集客コストを抑える
中古車選びはネット検索から始まる人が多くいます。自社サイトやSNSで車両を写真・動画で紹介し、スタッフや整備の様子も発信すると、信頼の獲得につながります。集客の具体策は「集客」の記事をご覧ください。
利益率改善に取り組む前の注意点
粗利率だけを追うと価格が上がって在庫回転が落ちるため、粗利率・粗利額・在庫日数の3つを同時に見ることが、利益率改善で失敗しないための前提です。
- 粗利率を上げすぎると売れ残りが増え、値下げで結局粗利が減ることがある
- 相場が下がる局面では、落札上限額の前提となる販売予定価格を見直す必要がある
- 公庫データは平均値で、立地や扱う車種が違えば適正な水準も変わる
- 小規模店は役員報酬の取り方で営業利益が大きく変わるため、他店との単純比較は避ける
- 損益分岐台数は平均粗利額で計算するため、高額車が1台売れた月は実態より良く見える
よくある質問
中古車販売の粗利率の平均はどれくらいですか?
日本政策金融公庫の2026年8月公表データでは、中古自動車小売業の粗利率は従業者規模別の平均で24.8〜28.7%です。決算ベースのため、整備や手数料などの売上も含みます。
中古車1台あたりの利益はいくらですか?
車両価格と経費で変わるため、一律の金額はありません。粗利率25%で計算すると、販売価格100万円なら粗利は約25万円です。ここから人件費や広告費などの経費を差し引いた額が営業利益になります。
「利益率10〜20%」という情報とはなぜ違うのですか?
計算の範囲が違う可能性があります。車両1台の売買差益だけを見るか、整備や手数料を含む決算全体を見るかで数値は変わります。比較するときは範囲を揃えてください。
小規模な中古車販売店でも利益は出せますか?
出せますが、平均像は厳しめです。公庫データでは従業者1〜4人の営業利益率は平均−1.5%です。まず月の固定費を1台あたり平均粗利額で割り、黒字に必要な販売台数を把握してください。
利益率を上げるには何から始めればよいですか?
入札前に落札上限額を決めて守ることと、在庫日数に上限を設けることから始めるのが現実的です。どちらも今ある仕入れと在庫のデータで着手できます。
まとめ:粗利を守り、経費を超える利益を残す
中古車販売の粗利率は25〜29%が目安ですが、平均では営業利益がほぼ残らないため、黒字台数の把握、落札上限の徹底、在庫回転の管理で1台ごとの粗利を守ることが利益改善の出発点です。
- 粗利率の目安は25〜29%(日本政策金融公庫、2026年8月公表)
- 人件費と諸経費で売上の約23〜28%を使い、営業利益率は平均−1.5〜1.4%
- 黒字に必要な台数は「月の固定費÷1台あたり平均粗利額」で出す
- 落札上限額は「販売予定価格−目標粗利−諸費用」で入札前に決める
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